私たちの研究室では、神経発生の分子メカニズムの理解と、その破綻として生じる神経発達障害の発症機序や病態理解のための基礎研究を展開しています。とくに、自閉スペクトラム症等の責任遺伝子の機能解明や、父親側から次世代に受け継がれるエピジェネティックな因子を探求しているところです。また、今後、遺伝子レベル、神経細胞・回路レベル、行動レベルにおいて脳の性差を理解するために、網羅的な遺伝子解析、エピエネティック因子の解析、マウスの行動自動計測データの解析等に関して、数理科学的なアプローチや機械学習等を利用したビッグデータ解析を利用することにより推進する予定です。&Aをさまざまな領域の研究者が最先端の科学を駆使して創っていきます。
私は脳神経内科という神経科学を基盤とした臨床に携わっています。脳神経内科では認知症や脳卒中という患者さんの数が多い病気から、数は多くないものの治療が難しい変性疾患などの希少疾患まで幅広い領域をカバーしますが、いずれも新しい治療法の開発が期待されています。そのためには神経疾患の原因や病態を解明することが大切であり、神経科学関係の研究室が集まる当コアセンターのメンバーと一緒に活動をさせていただいております。さらには新しい治療薬の開発のためには病院の臨床研究推進センターなどとの連携をはかり、患者さんの遺伝学的情報を含めた臨床のビッグデータの集積によるAI医学も展開していきたいと考えています。
ニューログローバルコアセンターは、2007〜2011年度に文部科学省の支援により展開された脳科学グローバルCOEというプロジェクトの活動やネットワークを基盤として開設されました。医学系研究科および加齢医学研究所に所属する脳・神経科学関係の基礎および臨床研究を行う研究室が参画し、現在は、東北大学国際共同大学院プログラムの1つであるNeuro Globalプログラムにおいて、国際的な環境で博士課程の人材育成を行う支援を行っています。国内外の研究者を招聘し、脳・神経科学に関する最先端のセミナーを開催するとともに、今後はさらに、大学院生や若手研究者が比較脳解剖学、神経生理学、実験発生学、動物行動学等の基礎的な技術に触れるための実習等も提供する予定です。
最近、プレスリリースされた研究成果として、青木正志教授らは、患者由来iPS細胞を用いて筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新しい病態関連候補因子を発見しました。また、神経難病・視神経脊髄炎スペクトラム障害に特徴的な自己抗体が体の異なる部位で産生されていることも見出し、さらに、視神経脊髄炎関連疾患の新規分類方法を発表しました。また、松井広教授らは、神経-グリアの相互作用が脳内デュアルレイヤー情報処理の細胞生理学的基盤であることを発見しました。さらに、大隅典子教授らは、神経発達障害メカニズムの理解に関して、父親加齢マウスモデルにおいて精子DNA低メチル化が鍵となることを見出すとともに、指定難病脆弱X症候群発症の新たな分子メカニズムに関し、胎仔脳での特定分子経路の活性化が原因の可能性を見出しました。