最先端の科学やテクノロジーが医療応用され、社会実装されるスピードも加速しており、技術の専門化と分業化、異分野融合による協業が不可欠になっています。治療の対象も、多くの患者を対象とするブロックバスターから個別化医療に注力されています。それに伴い、イノベーションの担い手としてのアカデミアの役割の重要性も増しています。化学や生物学に加えて、工学系や情報系の科学技術、さらにはそれらの組み合わせが必要とされ、異業種協業、異分野融合のオープンイノベーションがますます重要になりました。メディシナルハブの目的は、複数製薬企業のみならず、IT企業、ベンチャー、ベンチャーキャピタル、インキュベーターなど多くの異業種の参画により、最先端のイノベーション創出を可能とするエコシステムを構築することです。
新規医薬品の開発が難しくなってきている中でアカデミック創薬への期待は高まっており、産官学の連携とともに異なる研究領域の間での連携の重要性も高まっております。新しい医薬品のモダリティが幅広く模索される中で生物学、化学、物理学、工学、情報科学などのそれぞれの専門分野における最先端の研究成果、技術を共有し医療における共通の課題に向かって共創することが求められています。アカデミアでは低分子から抗体医薬、核酸医薬など多様な分子を様々な分野の視点から捉えて革新的な医薬を創製し社会からの要請に応えていくイノベーションシステムの構築が分野を超えて進みつつあります。メディシナルハブは異分野融合、異業種共創のための中継連携拠点として今後重要な役割を果たしていくものと考えられます。
医薬品だけ見ても、これまでの化学を基盤とする低分子医薬品と全く異なる生物系医薬品である抗体医薬、核酸医薬、細胞治療薬、遺伝子治療薬などの新たなモダリティの医薬品が主流になっています。今後は、情報工学系技術基盤であるビッグデータや人工知能(AI)など技術や開発手法を取り入れていかないと、競争の激しいライフサイエンス分野での研究開発は難しくなります。メディシナルハブ はオープンイノベーション型コンソーシアムで、医療課題を解決するために、医薬品、医療機器、AIソリューションなどモダリティを問わず、最先端の学際研究を展開しています。アステラス製薬株式会社と本学の共創研究プロジェクトであるTACTや、第一三共株式会社とのTOIDASなど大型のオープンイノベーションプロジェクトが稼働しています。
研究開発に加えて、オープンスペースを活用して、卓越大学院プログラムや交流会の場としても使用し、産学連携での人材育成も行っています。AMEDの「先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業」の管理運営事務局としても機能しています。製薬企業に加えて大手IT企業も参加し、学際領域の研究開発を実践しています。医療データ(ビッグデータ)をもとに、複数の人工知能(AI)ソリューション開発や、新型コロナ肺炎に伴う肺傷害を改善する経口治療薬の開発(日米欧州での第二相医師主導治験)など多数のモダリティに亘る研究開発を実施しています。