全ての病態には遺伝子発現の異常が関わっている、遺伝子発現の調節とその異常が病態解明と治療戦略開発に直結するはず、と考え研究を進めてきましたが、道はまだ遠く、エピゲノムの応答性と可塑性という難題が大きくそびえています。転写因子が遺伝子発現のスイッチとして作用することは間違いありませんが、転写因子が作用できるエピゲノムはどう作られるのか、逆にエピゲノムは転写因子作用の結果でもあるのか?この転写因子-エピゲノムのループは、代謝も含めた細胞内外の環境変化にどのように応答し書き換えられるのか、逆に維持されるのか?疾患におけるエピゲノム異常やその原因に関わる様々な謎を、コアセンターを中心とする最新の技術を組み合わせた共同研究を進めることで解明し、得られる知見を様々な病態の理解と治療戦略に応用していきたいと考えています。
エピゲノム修飾は、栄養や生活環境に応答し変動する特徴を有する。同じ遺伝情報を有する生体においても、異なる形質を発現する。そのため、分子標的治療においては、個人個人のエピゲノム状態に応じて薬剤の種類や量の選択が必要となる。エピゲノム修飾異常の解明は、疾患の病態解明にとどまらず、テーラーメイド医療を開発する上で、新薬開発も視野に入れた最先端医療となる。また、近年のエピゲノム解析技術と生物情報処理を行うネットワークシステムの開発は、飛躍的に進歩している。これらの最新技術の情報共有、特に微量サンプルを用いたエピゲノム解析やハイスループット解析は、その汎用性も高い。国際レベルの研究をする上では、感度、精度、解像度の高い解析技術を用いて正確なデータを取得し、解釈する必要がある。国際競争力を高め、共同研究などで国際協調を図っていくと同時に世界をリードする研究成果を挙げたい。
遺伝情報発現のポテンシャルは、エンハンサーやプロモーターなどのDNAの塩基配列情報に加え、DNAやヒストンの化学修飾が組み合わさったエピゲノムにより規定される。エピゲノムは様々な修飾酵素や脱修飾酵素により担われ、さらに代謝経路と密接に連携する。本コアセンターでは、幹細胞性やその分化を担うエピゲノム制御機構を解明するとともに、それに基づいて代謝疾患、がん、自己免疫疾患などの病態を理解し、治療戦略開発につなげる。
次世代シークエンサーや質量分析、分子イメージングなどの解析技術を駆使し、エピゲノム制御機構とその異常を解明する。特に、造血幹細胞、胎盤幹細胞、脂肪細胞などの分化応答に関わるエピゲノム関連因子の同定とその機能解析を進めている。転写因子とエピゲノム修飾・脱修飾酵素が形成する分子ネットワークとそのシグナル応答性に焦点を当て研究を進めている。また、メチル化を中心に栄養や代謝の変動に対するエピゲノム応答、そしてエピゲノム応答による代謝制御の観点から病態研究を進めている。