超高齢化社会を迎える日本において、活気ある生活の維持には目や耳などの感覚器を健全に保つことが不可欠です。しかし、加齢により感覚器は確実に衰え、感覚器関連の患者数は増加するものの、医師数は減少しているのが現状です。したがって、老化によるOOL低下の補助や、人材不足を補う医療システムのAI(人工知能)による効率化が、感覚器領域において期待されています。それらにしっかりと応えるべく、我が国での感覚器医療におけるAI研究活用の拠点として、学際的研究者を中心に横断的チームを結成いたしました。医用知能ロボティクスコアセンターでは、世界トップレベルの感覚器センターを目指し、全身疾患・基礎研究室と協力し、老化による感覚器の機能低下をデバイス+AI 活用により補助すると共に、遠隔診療を含めた医療システムの効率化にもAI を活用する予定です。
見る、聴く、味わう、嗅ぐ、話す、食べる、といった私達の日常の中で何気なく行われている感覚や行為は、先天的ないし後天的な障碍によって生活の営みの中で大きなハンディキャップを生じます。それらの方々が感覚や機能を回復して生活を豊かにすることを目的に、医学・工学・薬学といった様々な研究領域を基盤とする多くのスタッフが協調し、障碍の克服に努める必要があります。近年急速に発展したAIやロボティクスが融合した医用知能ロボティクス技術が医学へと応用される黎明期である現在、病態解明、創薬、医療機器開発に携わるスタッフとの人材交流に努めたいと考えております。
医用知能ロボティクスコアセンターでは、老化による感覚器疾患によるQOL低下を防ぐために、予防・診断・治療法の開発を推進するとともに、人材不足を補う医療システムについてAI活用により効率化を進める。学際的な研究チームを構成するために、東北大学の薬・工・理・農学部などの協力を得て、オールジャパン体制で共同研究を積極的に推進する。また、他施設との共同研究を進め、厚生省やPMDAとの積極的な話し合いをする場も提供する。基礎研究から得られた知見を臨床応用し、臨床現場で出た疑問を基礎研究により解明する世界レベルの感覚器研究を推進し、さらにAIで効率化・実用化を図り、その成果を社会に還元することを目的とする。
動物モデルを用いて、感覚器疾患発症とストレス防御機構との関連について調べ、薬剤ターゲットの探索研究を行う。眼球や内耳の異常検出や薬剤ライブラリーのスクリーニングを可能とする支援システムを構築する。
全身疾患と眼底血流変化が眼疾患の病態・予後と関連することから、全身疾患関連のコアセンターと協力して眼疾患病態解明を行う。嚥下造影検査やCT画像を用いて、3DCDモデルを作成し、嚥下運動中の食塊の挙動のシミュレーションを行う。嚥下造影検査解析の簡便化のために深層学習を利用するAI研究も行う。
AI補助診断、眼鏡型眼底検査装置(健康グラス)や内眼手術の低侵襲化を目指した抗酸化手術補助溶液の開発など、眼科医療機器開発を行う。内耳保護や内耳DDSを目的とした水中内視鏡技術を用いて、耳科手術用ロボティック・システムを開発する。