私は、細胞増殖のメカニズムに興味を持ち、その破綻であるがん(悪性新生物)の研究を続けています。2015年に免疫チェックポイント阻害薬の承認に始まる免疫療法の開発、2019年のオンコパネルによる遺伝子診断の開始など、がん研究者たちの努力が着実に臨床現場へ展開されるようになりました。一方で、腫瘍を構成する細胞種は多様であり時間とともに変化すること、特殊な構造のために薬物デリバリーが困難であることなども認識され、新しい課題が次々と生まれています。
本コアセンターでは、基礎医学研究者と臨床医学研究者が「がん」というキーワードの元に参集し、その克服に向けて努力を続けたいと思います。
1981年以降、日本人の死因のトップである「がん」を克服することは人類の悲願であり、科学のチェレンジです。がん医学コアセンターは、新しい医学的、科学的視点による基盤研究によりがんの本態解明を探求し、革新的な診断方法や治療方法の開発に繋がる新規知見を見いだし、東北大学病院の臨床研究開発基盤を最大限に活用して次世代さらには未来型の医療の創生を目指します。
分子生物学、生化学、細胞生物学、免疫学などプロフェッショナルな基礎研究者とがんを扱っている臨床各科の研究者が一同に会して、がんを多方向から見ることで、新しい研究を推進したいと考えています。がんをどのように捉えるのか、それは非常に多岐にわたります。そして、新しい研究手法・研究機器の開発にともなって、次々と新しい知見が積み上がっています。それらの知識・技術・リソースを研究者間で共有する場として、このセンターを機能させ、コアセンターメンバーの新しい発見に繋げていきたいと思います。
がん研究は、あらゆる分野の研究者が、参加し貢献できる難題に溢れています。多くの研究者とともにこの課題に挑戦し、医学への貢献を続けます。
ヒト固形癌は、正常な組織が何らかの原因で遺伝子変異もしくはエピゲノムの変化が起こることで発生すると考えられています。しかし、「がん」と私たちが診断できる時には、すでに正常な組織から様々な変化が生まれており、さらには正常な細胞との間にがん細胞に相互に影響を与えあっていることがわかっています。
私たちは、主に東北大学病院で収集しバイオバンクに蓄積したがん臨床検体からゲノムDNAやRNAを抽出し、次世代シークエンサーによって網羅的に解析することで、ゲノムの変異、転写の異常など、正常組織とがん組織の違いを見出し、それらがどのように発がんまたはがんの進展に寄与しているのか解析を行なっています。