スポーツは様々なレベルの一番を目指す競技、人生を豊かにする趣味や生き甲斐、健康の維持増進、あるいは医療におけるリハビリテーションなどさまざまな目的を持って行われる人類社会が長年にわたって培ってきた活動の一つです。多くの活動は直接生命の維持には関わりませんが、スポーツ活動を行うことによってさまざまな心や体の変化が起こります。生命科学の進歩により適応現象のメカニズムが少しずつ明らかになりつつありますが、未解決の課題や誤解をとくべき理解はまだまだたくさんあります。コアセンターではスポーツが人類にとって一層豊かで価値があふれるものになるようにスポーツを実践する人々に納得のいく説明ができるスポーツのQ&Aをさまざまな領域の研究者が最先端の科学を駆使して創っていきます。
現在、スポーツと健康は当たり前のように関連付けられています。しかし、スポーツが本当に社会生活を送っている人たちの健康につながっているかは、きちんとした疫学研究で確かめる必要があります。スポーツは身体活動の一つです。過去四半世紀にわたり世界中で身体活動に関連する疫学調査が行われ、健康づくりを目的とした身体活動のガイドラインがWHO以下、世界各国で示されるようになりました。我が国でも2006年にシステマティックレビューによる推奨量が示された後、2013年に改訂され、現在バージョンアップに向けた検討が続いており、当センタースタッフも参画しています。スポーツおよびそれに関連するトレーニングなどが実社会でどのように健康と関連しているのか、しっかりとしたエビデンスを発信していきたいと考えています。
コアセンターの主要メンバーは、センター長が所属する医工学研究科健康維持増進医工学分野、副センター長が所属する医学系研究科運動学分野のスタッフに加え、学際フロンティア科学研究所の学内メンバーで構成され、メカニズム解明のための基礎的研究から健康増進のための疫学研究・先端技術・データサイエンスに基づく評価技術などの研究開発に取り組んでいます。また、コアセンターが発足当初より支援してきたスポーツ庁指定ナショナルトレーニングセンター高地トレーニング拠点施設である蔵王坊平アスリートビレッジのスタッフも参加しています。コアセンターでは利用強化選手・チームの医学的なサポートや強化選手をサポートするコンディション評価のためのサポートパッケージについてのアドバイスを行っています。
コアセンターでは、幅広くスポーツに関連する疑問に答える研究を推進しています。なぜ強くなる?弱くなる?巧くなる?健康になる? メカニズムについて生理学、細胞生物学、分子生物学、神経科学、バイオメカニクスを駆使して解明を進め、疫学により人の健康にどの程度関連しているのかを見極め、センサー工学やデータ科学を駆使して人の動きや体の中で起きていることをみえるようにすることに取り組んでいます。最近のトピックスとしては、なぜ運動やリハビリは苦しいのかMoonshotミトコンドリア先制医療でいただいた課題に取り組んでいます。またいわゆる筋トレは健康維持や改善に役立っているのか、妊娠中の母親の運動をすることは生まれてくる赤ちゃんの健康にどんな影響を与えるのか、異なるタイプのトレーニングによりなぜ異なる運動能力が獲得されるのかなど、遅発性筋肉痛は起こるべくして起こっているなどさまざまなテーマに取り組んでいます。研究キーワードはstrength training, epigenetics, signal processing, explainable AI,などです。